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頭と首(肩)の筋肉の仕組みは、オーケストラに似ています。
指揮をするのは脳で、指揮棒は脊髄、楽団員は大小さまざまな筋肉・・という関係になります。そして、筋肉の楽団員が奏でるハーモニーが、首を安定させたり、いろいろな方向へ回したり、またどんなにかすかな、どんなにすばやい首の動きも実現させるのです。
どの動きも、私たちの意識は必要とされず、筋肉自らが行います。楽器と同じで筋肉にもさまざまな形状や大きさがあり、適切に配置されたこれらの筋肉は、召集がかかるとおのおの任務を果たし、スムーズでリズミカルな動きを作り出します。
首の筋肉の両端には腱があり、腱は骨につながっています。腱には太い帯状のものもあれば、細いひも状のものもあります。
例えば、手首の皮膚の下を例にとって見てみましょう。握り拳をつくって手首を掌側に曲げると、皮膚の下にひものような腱が浮き出てきますよね。腱は硬く、筋肉が緊張し収縮して、腱を引っ張らないかぎり動きません。
そして靭帯は骨格を構成する個々の骨をつなぎ合わせる働きをし、その配置の具合によって、骨のつなぎ目、つまり関節の動きをどこまで許容するかを決めています。
そうやって筋肉というのは、いろいろな強度で収縮して腱を引き寄せ、頭や首、その他体のあらゆる部分を正しい位置に保ったり動かしたりするのです。
足首の捻挫であれ、テニス肘による腱の断裂であれ、腰の筋肉の張りであれ、損傷とそれに対する体の反応の原理はみな同じです。
その同じ原理が首に働いた場合、首の不調を招く可能性があるのです。
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首は、昼夜を問わず1時間に約600回も動いていると言われます。つまり首は忙しく動く部位であり、どの瞬間をとってみても、そこでは実にさまざまなことが起こっているのです。
そして、動いていなかったとしても、6キログラムもの重さがある頭を支えないといけないわけです。
深呼吸をしてみてください。首の側面の、チょうど後ろ側に、細い紐状の筋肉の輪郭がいくつか浮き出るのが見えるでしょうか。これは斜角筋といって、胸鎖乳突筋が首を回したり横に曲げたりするのを補助する筋肉です。
第3頚椎から第6頚椎の、両側に突き出ている横突起を起点として、第1、第2肋骨まで伸びています。斜角筋には、深呼吸を助けるという重要な役割もあります。
胸の上部を引き上げることで、肺を十分に膨らませるのです。非常にまれですが、この筋肉が肋骨に正しくつながっていない場合があり、そうなると索状硬結を生じて、頭から斜角筋を通って腕へと通じる血管や網状の神経を圧迫することがあります。
時にはこれが、いわゆる胸郭出口症候群を引き起こし、腕にしびれや脱力感、それにまれなケースでは、血液循環の異常をきたすのです。
これよりずっと一般的な、首の椎間板による神経の圧迫とよく似た症状です。
首の両側にある筋肉や血管は、たすきがけのシートベルトが原因で傷つくことがあるのをご存じでしょうか。世の中に完璧なものはなく、シートベルトもまた悩みの種になり得るというわけです。
深呼吸をしたり、ため息をつくときに必要な斜角筋は、首にあります。頭を引っ込めなければならないときの胸鎖乳突筋、頭を高く上げたいときの僧帽筋上部も首の筋肉です。
首の痛みに悲鳴を上げたいと思うときも、悲鳴を上げるのに必要な筋肉はその痛む首の中にあるのです。緊張のあまり言葉に詰まったとしても、そこにもまた首の筋肉が加担しています。
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